後遺障害 聴覚を司る 耳 | 弁護士法人ALG 後遺障害 / 東京

耳の障害(内耳等及び耳介)

部位別後遺障害・耳

1|はじめに

交通事故により、外から耳と見える部分(これを耳介や耳殻といいます。)を失ってしまったり、聴力障害が生じたり、耳漏(鼓膜に穴が開き、耳の穴から液体が流れる状態になること)や耳鳴りなどが残ったりといった、後遺症が残ってしまうことがあります。

このような耳の後遺症については、後遺障害として、「聴力障害」と「耳介の欠損障害」が後遺障害等級表において定められています。

また、後遺障害等級表に定められていない耳漏や耳鳴りについても、その障害の程度に応じて相当等級が認定されます。

2|聴力障害

交通事故によって聴力を喪失したり、低下してしまったという後遺症が残ってしまった場合、後遺障害の認定対象となります。

(1)聴力の検査方法

聴力障害にかかる等級は、純音による聴力レベル(以下、「純音聴力レベル」といいます。)の測定結果と語音による聴力検査結果(以下、「明瞭度」といいます。)をもとに判断されます。

①純音聴力検査

純音聴力検査は、音が聞こえるかどうかを検査するものです。

人の聴力には、空気の振動によって音を把握する聴力(気導聴力)と、頭蓋骨の振動によって音を把握する聴力(骨導聴力)があり、この両方を検査することで純音聴力レベルを把握します。

ヘッドホンをつけた状態でオージオメータという装置からさまざまな周波数の純音をさまざまな強さで聞いて測定する方法です。

音の高さ(周波数)ごとに音の強さ(大きさ)を変えながら聞いて、どの程度聞こえたかを測定し、聞こえる最も小さな音の大きさ(可聴閾値)を調べます。

純音聴力検査は、日を変えて3回行い、検査と検査の間は通常7日程度空けられ、後遺障害の等級認定は、2回目と3回目の測定結果の平均純音聴力レベルの平均により行われます。

②語音聴力検査

語音聴力検査は、スピーチオージオメーターを使用し、言葉の聞き取りを検査するものです。

聴覚は、単に音を聞くということだけではなく、人と人がコミュニケーションを取る上で欠かすことのできないものであり、声は聞こえても何を言っているのかが理解できないと意味がありません。

語音聴力検査(測定)では、日常会話で使われる語音、「ア」とか「イ」とかいう語音や数字が使われます。

検査語音がどの程度の音の大きさだと何%正しく聞こえるかを調べる検査です。

語音聴力検査も、①の純音聴力検査と同様、原則として、日を変えて3回行いますが、検査結果が適正と判断できる場合には1回で差支えないとされています。

耳鼻科医であっても、後遺障害認定のための検査方法を熟知しているとは限りません。

検査にあたっては後遺障害認定のために必要であることを伝え、検査をお願いする必要があります。

(2)聴力障害の等級

聴力障害として定められている後遺障害は、両耳と片耳(一耳)の聴力に関して、その聴力の低下の程度に応じて各等級が定められています。

①両耳の聴力障害

両耳の聴力障害については、後遺障害等級表に掲げられている両耳の聴力障害の該当する等級によって認定されることとされています。

そのため、下記の片耳ごとに後遺障害として認定された等級を併合するという方法で認定されるわけではありません。

等級 障害の程度 具体的な認定基準
第4級 3号 両耳の聴力を全く失ったもの 両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの、または、
両耳の平均純音聴力レベル80dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの。
第6級 3号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの、または、
両耳の平均純音聴力レベルが50dB~80dB未満であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの。
4号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの。
第7級 2号 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの、または、
両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの。
3号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの。
第9級 7号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 両耳の平均純音聴力レベルが両耳60dB以上のもの、または、
両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの。
8号 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの。
第10級 5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの、または、
両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの。
第11級 5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの。
②片耳(一耳)の聴力障害
等級 障害の程度 具体的な認定基準
第9級 9号 1耳の聴力を全く失ったもの 1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの。
第10級 6号 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 平均純音聴力レベルが80dB~90dB未満のもの。
第11級 6号 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 平均純音聴力レベルが70dB~80dB未満のもの、または、
50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの。
第14級 3号 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 平均純音聴力レベルが40dB~70dB未満のもの。

3|耳介(耳殻)の欠損障害

外から耳と見える部分は、耳介や耳殻とも呼ばれ、貝殻状の形は、音を集めるための働きをしているといわれています。

交通事故により、この耳介の部分を欠損した場合には、後遺障害の認定対象となります。

(1)耳介の欠損障害

等級 障害の程度 具体的な認定基準
第12級 4号 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの 耳殻の軟骨部分の2分の1以上を欠損したもの。

上記等級は、片耳(一耳)ごとの等級であり、両耳とも「耳殻の大部分の欠損した」場合には、併合により第11級の後遺障害が認定されることになります。

(2)醜状障害との関係

耳介(耳殻)は、外から耳と見える部分であり、この耳介が欠損すれば、外貌醜状の後遺障害ともとらえることができ、外貌醜状の後遺障害の認定対象ともなります。

外貌醜状の後遺障害としては、第7級と第9級と第12級の等級があり、耳殻の欠損と比べてより高い等級が認定される可能性があります。

例えば、「耳殻の大部分の欠損」としては第12級4号に該当しますが、醜状障害として第7級12号に該当する場合、高い等級の第7級12号に認定されます。

また、耳殻の軟骨部分の欠損が、2分の1を超えず、耳介の欠損障害として12級4号に該当しない場合でも、その程度が外貌に醜状を残すものにあたるとして醜状障害の第12級14号に認定される場合もあります。

また、両耳の耳殻の欠損がある場合、総合して外貌醜状の有無・程度が判断されます。

4|耳鳴り

交通事故の被害に遭った後に、耳鳴りが止まないなどの後遺症が残った場合、後遺障害の認定対象となります。

(1)耳鳴りの検査

耳鳴りの検査としては、ピッチ・マッチ検査やラウドネス・バランス検査があり、これらの検査によって耳鳴りが存在すると医学的に評価できるかを調べます。

①ピッチ・マッチ検査

ピッチ・マッチ検査とは、耳鳴りの検査としてよく行われる検査で、「聞こえている耳鳴りがどの高さの音か」というのを調べる検査です。

主に、本人にしか聞こえないことも多い耳鳴りの存在を客観的に立証する検査として用いられます。

初めから段階的に用意された固定周波数(検査音周波数の段階は11段階)のうち、どの周波数の音に自分の感じている耳鳴りが近いかをマッチさせる検査(固定周波数ピッチ・マッチ検査といいます。)と、周波数を連続的に変化させられる検査機器を用いてのピッチ・マッチ検査であり、耳鳴りとピッタリ来る周波数を探る検査(連続周波数ピッチ・マッチ)があります。

②ラウドネス・バランス検査

ラウドネス・バランス検査とは、耳鳴りの大きさを客観的に診断するために行われます。

検査としては、①ピッチ・マッチ検査にて特定された耳鳴りの周波数を用いて、その周波数音を小さな音から徐々に上げ下げしながら、耳鳴りと同じ大きさと感じられる音量を探していきます。

①ピッチ・マッチ検査と②ラウドネス・バランス検査を組み合わせることで、「どの高さの耳鳴りがどのぐらいの大きさで聞こえているか」を特定することが出来るわけです。

(2)耳鳴りの後遺障害

難聴を伴うことが要求されているので、聴力障害と同様に、聴力検査が必要となります。

等級 障害の程度 具体的な認定基準
第12級相当 耳鳴りにかかる検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの 聴力障害には該当しない程度の難聴であっても、耳鳴りが存在するであろう周波数純音の聴力レベルが低下しており、著しい耳鳴りを常時残すことが上記①と②の検査により立証可能なもの。
第14級相当 難聴に伴い常時耳鳴りがあることが合理的に説明できるもの 聴力障害には該当しない程度の難聴であっても、耳鳴りが存在するであろう周波数純音の聴力レベルが低下しており、常時耳鳴りがあることが合理的に説明できるもの。

(3)耳鳴りの症状の把握

耳鳴りは、ご本人しか聞こえないことも多いので、以下のように、ご自身の耳鳴りの症状を把握し、症状内容を適切に主治医の先生にお伝えすることが大切です。

①耳鳴りの期間

現在の耳鳴りはどのくらい続いているのか。

②耳鳴りの生じる部位

左右どちらから聞こえるか。

③耳鳴りの音

具体的に聞こえる音はどのような音か。

④耳鳴りの大きさ

小さいか、中くらいか、大きいかなど。

⑤耳鳴りの強弱

いつ強く感じるか。

⑥耳鳴りの影響

仕事や生活への影響はあるか。

⑦ほかの音

実際の音が聞こえにくくなっていないか。

5|耳漏

交通事故により鼓膜に穴が空いて分泌液が流れ出てしまう耳漏の後遺症が残ってしまった場合、後遺障害の認定対象となります。

難聴を伴うことが要求されているので、聴力障害と同様に、聴力検査が必要となります。

等級 障害の程度 具体的な認定基準
第12級相当 鼓膜の外傷性穿孔による耳漏が常時あるもので、難聴を伴うもの 手術により治療をした場合に、耳漏が常時あり、かつ、聴力障害には該当しない程度の難聴であっても、純音聴力レベルが低下しているもの。
第14級相当 鼓膜の外傷性穿孔による耳漏があるもので、難聴を伴うもの 手術により治療をした場合に、耳漏があり、かつ、聴力障害には該当しない程度の難聴であっても、純音聴力レベルが低下しているもの。

事例集